写真の焼き付けをするにしても、パソコンのモニターでみるにしても、いくらかの拡大が必ずあり、ほとんどの場合、フィルムサイズでそのまま見ることはまずありません。ポジスライドをルーペ無しで見る場合くらいです。
たとえば、35mmカメラのフィルムサイズ(36×24mm)のものを、A3サイズ(420×297)に印刷すると、280÷24≒11.7倍程度となります。つまり、撮影後の処理によって、拡大して観察することができるわけです。カメラで撮影するということは、顕微鏡観察をするといえなくもないでしょう。
デジタルカメラが普及する以前は、銀塩フィルムで撮影後、印画紙に焼き付けという工程を経て、被写体を観賞していました。全紙大に焼き付ければ、かなり大きな拡大観察をすることになります。銀塩フィルムの解像度を考えると、詳細な観察には素晴らしい方法でありますが、これは大変費用のかかり、気軽に頻繁におこなうわけには行きませんでした。
ところが、デジタルカメラとパソコンという組み合わせの普及によって、容易に液晶の大画面に被写体を表示し観察することが行われるようになり、とくに撮像素子の解像度を100%有効に活用した観賞方法をピクセル等倍観賞とよび、芸術としての「写真」にとって無意味であるとの批判もあり、議論のわかれるところでもあります。
確かにピクセル等倍観賞でパープルフリンジが強い、収差が強い、解像度が甘いなど、いろいろケチをつけるのは簡単ですが、それは「写真」の本質からはずれることであり、普通に写真を楽しむ上では、アラばかり目立ってしまうことになります。
しかしながら、生物などのを微細な構造などを詳細に観察したい場合、もっとも簡単で有効でしかも安価な方法であります。APS-Cサイズあるいは35mmフルサイズの撮影画像をピクセル等倍表示すれば、30インチ液晶モニターでも足りなくなります。さらに、マクロズーム3x-1xで拡大マクロ撮影した場合の液晶モニター上での倍率を計算すると、実に100倍弱程度となります。このレンズは高価(撤退前の実勢価格で13〜14万程度)ではありますが、細胞レベルまで観察できる高性能のカメラ付き実体顕微鏡と考えると、決して高い物ではないでしょう。
コニカミノルタがデジタル一眼レフカメラを発売したときこそ、このレンズが最も真価を発揮でき、それをアピールできる最大のチャンスであったのかもしれません。でもメーカーの扱いは冷ややかで、売り物の手ぶれ防止機構ASが効かない唯一の純正レンズとして、名前が載ったくらいです。どれくらい生産され売れたかは知りませんが、最後までマイナーなレンズとして日の目を見ずに終わったことは、とても残念です。CANONからも同じようなレンズ(MP-E 65mm)が発売されていますが、ジャジャ馬であるという意見もあります。(Googleで <MP-E 65mm ジャジャ馬> で検索してみてください。)
ちなみに、上の写真はすべて手持ち撮影です。